ブームを過ぎても
NHKの歌番組で作詞家・松本隆の特集があった。ユーミンとの対談は興味深いものがある。松本隆は歌謡曲とニュー・ミュージックとの狭間で都会的センスで成功した作家である。同じ作詞家で佐伯孝夫も戦後都市のモダニズムを描写した。阿久悠とも明らかに異なる。ここで作家論には触れないが、松本は「自分の作品は古びない」と自らの自信のほどが見えた。死んでからも作品は残る、と。確かに、松田聖子の歌う1980年代ポップスは今でも新鮮である。コンビレーション・アルバムで綾瀬はるかが「赤いスイートピー」を歌っている。だが流行歌でブームを過ぎても時代遅れではない、古びないものがこれまでにあっただろうか。ことに音楽の世界では百年間歌われることは稀であろう。
昨夜「グーグーは猫である」という映画を見た。むかしの「子猫物語」を思い出した。子猫チャトランの冒険物語で、子猫ブームを生んだ。畑正憲が監督だが、市川崑が協力し、坂本龍一の音楽、谷川俊太郎の詩、小泉今日子の詩の朗読。だが「子猫物語」はいま見ると古臭い。動物に名演技をさせることがわざとしくて嫌になる。そういえば「名犬ラッシー」にしてもターザン映画にしても、動物が活躍するが、どこかサーカスに近いものがある。現代人は動物にサーカスのような曲芸を見て喜ぶのではなく、生き物たちとの身近なふれあいで癒されることを第一にしているようになった。だから「子猫物語」は古いのだろう。
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