胸より胸に
有馬稲子が東宝から松竹へ移り、「にんじんくらぶ」第1回自由作品。高見順の原作に惚れこんだ有馬が映画化を切望したといわれる。浅草のストリッパーの役。宮島志津子は戦災孤児だが、踊り子をめざして明るく生きる。しかし恋人(冨田浩太郎)と意見が合わず別れ、ペット吹きの吉植(大木実)と同棲生活をはじめる。退廃した生活に嫌気がさし、別れ話のもつれから殺される。高見の浅草物のひとつだが、戦後の左翼的に潮流を取り入れているが、階級的な目線でみているため、ストリッパーの本質が描けていない。有馬のダンスも宝塚歌劇団のようで、戦災孤児の志津子役には不似合いな感がある。有馬稲子は戦後女優の中でも芸への意欲と美貌でトップクラスだが、なぜかゴタゴタが多かった。東宝映画出演、松竹移籍、もず事件、離婚騒動、元祖トラブル女優だった。自己主張の強い女性だったが、自分を見失うことなく大女優となった稀有な例である。
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