本歌取り
むかし野島伸司脚本のドラマで「人間失格」があったが、太宰治の遺族から抗議があったことから、第2話からタイトルを「人間・失格~たとえばぼくが死んだら」と一部修正して放送した。村上春樹の小説「ノルウェイの森」はビートルズの楽曲と同名のタイトルであるし、現在放送中の北川悦吏子脚本の「素直になれなくて」はシカゴに同名の楽曲がある。これらはいわば和歌の世界でいう「本歌取り」に近いものであろうか。名作と同名のタイトルをつけることで、意識的に複雑な味わいを出す技法である。パクリとか盗用ではなく、誰もが知っていて堂々と劇中でも元ウタの話が登場することが多い。
「人間失格」のケースは本当に同名のタイトルでは著作権侵害に当たるのか法的なことはわからない。遺族の主張が認められれば、自費出版などで過去に出した作品のタイトルと同名となった場合でも問題が派生するだろう。著作権は幼児の書いた絵でも登録しなくても発生するので判断は難しいが、小説などの題名は通常著作物としては保護されないことになっている。「人間・失格」の事例はクレームに対する過敏な反応であったのかもしれない。
これとは別に商標制度というのがある。最近、大手パチンコメーカーが「ヒトラー」「リンカーン」「聖徳太子」「空海」「織田信長」などの歴史上の人物名を特許庁に商標出願したが「公序良俗に反する」などの理由で登録を拒絶されたという。しかしすでに「空海」「織田信長」など数件の登録商標はされているらしい。これらの話も専門家でないと詳しいことはわからない。
上海万博PRソングが岡本真夜の「そのままの君でいて」と酷似している問題で、日本側のきわめて寛容な態度がかえってこれからも起こりうるであろう著作権問題を考えるとマズかったともいえる。元ウタが話題性を集めセールスに影響するという算盤ずくがあるようだが、音楽のパクリに寛容な姿勢はいただけない。引用と盗用の違いを見極めることが大切だろう。
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音楽のパクリに寛容な姿勢はいただけない。引用と盗用の違いを見極めることが大切だろう。
って、「わからない」専門家じゃないのでってくり返したあげく偉そうな提言・・・。書籍のタイトルに著作権は発生しません。私は専門家じゃないですが調べたらすぐわかりましたよ。
提言されるのはその程度のリサーチをしてからにしてはいかがでしょうか?
投稿: | 2010年5月 4日 (火) 07時23分