アメリカン・ポップアート1960年代
1960年代のアメリカ・ポップ・アートを代表する作家は、ロイ・リキテンスタイン(1923-1997)、アンディ・ウォーホール(1928-1987)、クレス・オルデンバーグ(1929- )、トム・ウェッセルマン(1931- )、ジェームス・ローゼンクィスト(1933- )の5人である。リキテンスタインは50年代にはデ・クーニング風の抽象表現的な油絵を描いていたが、1960年代前後から、新聞の続き漫画のひとこまを拡大し、赤・青・黄といった原色で描き始める。あるクリスマスの休暇に自分の小さな息子たちのためにミッキー・マウスの漫画を描いたのがきっかけで、純粋美術よりも漫画の方に今日のリアリティがあると大悟したのだという。その単純明快さと巨大性、原色とハード・エッジな抽象感覚によって彼はホップ・アート・スタイルの典型をつくりあげた。彼は新聞漫画の拡大図に、印刷の網点まで拡大して描く。そこには、印刷複製のメディアなしに今日の生活も芸術もありえないという概念も映されているのである。ウォーホールはエルヴィス・プレスリー、マリリン・モンローなどの大衆のアイドルの顔写真を縦横に繰り返し並べた作品で知られる。マクルーハンのいう「電子回路時代におけるメディア的存在」に近いものだといえるだろう。オルデンバーグは巨大モニュメントシリーズで「都市空間そのものがアートであり、ドラマだ」という彼の言葉がポップ・アートを語るときしばしば引用されてきた。ローゼンクィストは神秘感とフェティシズムが持ち味で、都市空間を主題とした宇宙図といった印象を与える。ウェッセルマンは裸婦のいる室内や女性の肉体の部分拡大を描き続けている。
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