阪神地方はどの地域をさすのか?
阪神といえば、地元の人は別として、遠方に住んでおられる方なら、野球の「阪神タイガース」を思いうかべられ、ホームグラウンドの甲子園のある地域をイメージされるであろう。ところが地元の人間でさえ、どこからどこまでが阪神地方なのか、と尋ねられると人により世代によりまちまちである。明治生まれの老人ならば、大阪も含めて神戸と阪神間の3地域をさす場合が多い。壮年ならば神戸と阪神間をさす。若い人なら阪神間をさす。もちろん個人差があり、一概にも言えないところがある。なぜこのようなことになったのか。もともと阪神という地名など歴史的に一度も存在していないことがその原因だろう。阪神電気鉄道株式会社は明治32年6月に社名を摂津電気鉄道株式会社として発足したが、同年7月に阪神電気鉄道株式会社として改称し、明治38年4月に営業を開始した。ここから「阪神」や「阪神沿線」という地域をさす言葉が生まれた。ももともとこの地域は大阪との関係をぬきにしては成り立たないので、「摂津」という国名は明治中期まで通用した。現在の阪神地方は摂津西部なので「西摂」(西摂大観という本がある)と呼ばれた。しかし「摂津」という古びた名称が新時代に相応しくないと考えたのであろう。大阪と神戸との結ぶという意味から「阪神」が誕生した。しかし、実際の行政地名は菟原郡、武庫郡、川辺郡、八部郡、有馬郡が戦前まで通用していた。戦後、広域行政がいわれだすと、兵庫をブロックにわけ、神戸を除く、阪神間の7市1町(尼崎、西宮、芦屋、宝塚、伊丹、川西、三田、猪名川)をで阪神ブロックとした。しかし、阪神という地方名は神戸を含む場合が普通であるから、話はややこしい。いまでも阪神百貨店は梅田(大阪)にあるし、阪神競馬場は宝塚、廃園になったが阪神パークは西宮だった。地名なのか企業名なのかネーミングが混在しているようだ。
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