加賀人物誌
加賀は江戸時代最大の百万石大名前田家の領地で、最大の外様大名のために常に百万石の保持と国替えの防衛が藩初以来の大方針であった。武断を避けて文治政策を徹底した根因はここにあった。図書収集の尊経閣文庫や元禄工芸の粋を示す百工比照など学芸大名の筆頭にも数えられる前田綱紀(1643-1724)の影響で、加賀の文運と美術工芸は今日まで盛んである。
絵画の俵屋宗達(江戸初期)、岸駒(1749-1839)、大樋焼の五代勘兵衛(1781-1856)、九谷焼の九谷庄三(1816-1883)、徳田八十吉(1873-1956)、蒔絵の米田孫六(不詳-1874)、松田権六(1896-1986)、金工の水野光春、山川孝次(1828-1882)、魚住安太郎(1886-1965)、米沢弘安(1889-1972)、加賀友禅の宮崎友禅(1654-1736)、木村雨山(1891-1977)、木工の氷見晃堂(1906-1975)らが美術工芸で知られる。学芸面では、藩儒の大田錦城(1765-1825)、富田景周(1732-1814)、森田柿園(1823-1908)、数学の関口開(1842-1884)、哲学の西田幾多郎(1870-1945)、国文学の藤岡作太郎(1870-1910)、藤井乙男(1868-1945)、評論家の三宅雪嶺(1860-1945)、仏教の石川舜台(1841-1931)、鈴木大拙((1870-1966)、天文学の木村栄(1870-1943)、歴史学の平出鏗二郎(1869-1911)、俳諧の千代女(1703-1775)がある。
近代文学では、艶麗幽美な幻想の世界を描いた泉鏡花(1873-1939)、自然主義文学の代表的作家・徳田秋声(1871-1943)、特異な叙情を美しくうたいあげた詩人・小説家の室生犀星(1889-1962)らが有名である。
戦前図書館界の大立者・中田邦造(1897-1956)は滋賀県出身であるが、昭和6年から15年まで石川県立図書館長を務め、県内読書運動を推進した。また戦後の市民読書に功績のある前川恒雄も石川県出身である。「加賀は天下の書府なり」
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