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2010年3月15日 (月)

大佛次郎と映画

Img_0028 映画「風船」

   大佛次郎(1897-1973)は流行作家として評価されることが多いのだろうか。大家でありながら「日本文学全集」の類には、そのラインナップから外されることが通例である。最も完成度の高い文学全集、「昭和文学全集」(講談社)において、ようやく第18巻に「大佛次郎、山本周五郎、松本清張、司馬遼太郎」の4人を1巻にまとめた豪華な本がでた。そしてこの4人の作家に何れにも共通するのは「歴史」である。大佛は「鞍馬天狗」「赤穂浪士」などの時代物でも知られるが、「ドレフュス事件」「パリ燃ゆ」「天皇の世紀」などの史伝物がある。そして「帰郷」「宗方姉妹」「風船」「旅路」などの現代物がある。現代小説も曲折した複雑な家族、夫婦の愛情、心理を繊細に描いているので映像化しやすい内容である。

  昨夜、大佛次郎の毎日新聞の連載小説の同名映画「風船」(昭和31年、日活)を観た。まさに大人の観賞にたえる映画である。主演の森雅之は戦前戦後の暗い時代を生きた男の哀愁を表現するにふさわしい役者である。その独特のしゃがれ声が生活に疲れたデカダンな雰囲気を醸している。息子が三橋達也なので、実年齢では無理があるが、不思議と老け役に違和感がない。(森は当時まだ45歳であったが60歳を演じている)前年の東宝「浮雲」の富岡兼吾のイメージをそのまま演じたようにも思われる。

  画家としてもてはやされた村上春樹(森雅之)は今では写真工業会社の社長として成功していた。妻(高野由美)との間はしっくりいっていない。息子の圭吾(三橋達也)は無気力で、久美子(新珠三千代)という愛人がいるが、歌手(北原三枝)に心がうつり別れ話を久美子につげる。妹の珠子(芦川いずみ)は知的障害はあるが心優しく久美子を慕う。だが久美子はガス自殺する。京都にいる左幸子はヌードモデルをしながら生計をたてているが、春樹はむかしのように京都に住んでみたくなる。そして冷酷な圭吾を叱りとばして、自分は一切の地位と財産を捨てて、京都への永住を決意する。妻と別れるが、娘の珠子は京都へやって来るのだった。涙ぐむ春樹。ラストで珠子が盆踊りをおどるシーンは暗くなりがちな映画に光明をもたらす。まるで松竹大船調である。

    監督は「幕末太陽伝」の川島雄三。日活初期には西河克己、斎藤武市、中平康、今村昌平、蔵原惟繕、神代辰巳、松尾昭典、鈴木清順ら若手監督が松竹から移籍したが、川島もその一人である。川島は複雑な人間心理を描くことが得意である。同年に古川卓己の「太陽の季節」が熱狂的な人気を集めたが、日活作品にはアクション映画・青春映画路線よりも、今村昌平、浦山桐郎、蔵原惟繕らの野心作に今日でもみるべき作品群が多い。

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