狡兎死して走狗煮らる
作家司馬遼太郎は司馬遷には遼かに及ばない、という意からペンネームをつけた。野末陳平は、漢の劉邦の一参謀である陳平から名前を拝借しているらしい。だが政権交代を成就した政治家とは気が大きい。前原誠司は「鳩山首相は人の話を聞く劉邦タイプ。突っ走る項羽タイプではない」と総理を持ち上げた。天下を取った気分で、比較する歴史上の人物も大きい。だが、このたえと話にはちょっと危ない落ちがある。
漢の劉邦は天下を取ったが、楚漢抗争の第一の功労者である韓信(股くぐりの故事で知られた武将)を捕縛した。「すばしこい兎が死ぬと良犬は無用のもとなって煮られてしまう。敵対の国がなくなると忠臣がいなくなる」と韓信は身をもってその言葉を味わった、と司馬遷の「史記」にある。劉邦もさすがに気をとがめたとみえ、韓信を淮陰侯に格下げにしただけだった。劉邦の死後、のちに呂后にはかられて斬殺される。前原の本心は己を韓信に譬えて、マニフェストでの功臣第一の私が半年経つと亡ぼされた、ということを暗示しているのであろうか。
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