何を読むべきか
今年は国民読書年である。読書室を経営している者としては、何をすべきかと考えさせられる問題である。「人と本とをつなぐ」と一言でいっても、喜びもあるが相当に難しい生業だ。とりあえず先ず自分が何を読むかということを起点にしたい。「書物を買いもとめるのは結構であろう。ただしついでにそれを読む時間も、買いもとめることができればである」と皮肉屋ショウペンハウェルが言っている。実際、十分な読書時間を毎日の生活でつくることが大事であろう。10分読書とか通勤時間で読む、という人もいるが、それでは十分な読書の醍醐味を知ることはできない。ブログのネタをさがすために、本を調べるのでなく、名作をじっくりと読む読書がしたい。丸山真男が「何を読むべきか」「勉学についての二、三の助言」という一文で成る程とおもわせることを書いている。これは東大生向きに書いたものであるが、かなり老成した学徒にもあてはまるように思う。つまり「学生諸君の読書の一般的な指針として、私の経験からいへば、平凡な事の様ですが、学生の間でなければなかなか読む暇とエネルギーのない様な相当大部の名著を、一つでいいから徹底的に精読することをお勧めします」とある。たとえば哲学を専攻したいと思う学生がいて、論理的、抽象的な哲学書ばかりを読むのではなく、社会科学の古典的な名著を読んでおく必要がある。日本の哲学者は哲学だけだが、欧米の哲学者のほとんどは社会科学の個別科学の専門を一つもっている。丸山は政治学だが歴史学を勉強した。ジョン・モーレー(1838-1923、イギリスの伝記作家)とかエミール・ルードヴィヒ(1881-1948、ドイツの伝記作家)とかの伝記を推薦している。(どうやら原書で読めといっているようだが)歴史を学ぶと、人間を再発見するという。大部の名著を読むにはエネルギーもいるが、収穫も大きいだろう。そういえば、まだ私はマックス・ウェーバーの本があるのにまだ全然、読んでいない。己の不勉強を恥じ入る。
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