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2010年2月28日 (日)

死刑制度をめぐる論議

    死刑とは、受刑者の生命を剥奪し、その社会的存在を抹殺することを目的とする刑罰であり、わが国の現行刑法も死刑制度を刑罰体系の中に認めている。しかし、近年、刑罰の本質につき教育刑主義を唱える近代学派の立場から、また宗教的教義、人道主義の貫徹という立場から、さらには誤判の救済が不可能という理由から、これに対して廃止を主張する動きが顕著になってきている。たとえばEU各国は、死刑廃止を決定し、EUへの加盟条件の1つとしている。また欧州人権条約第3条で死刑を禁止している。そしてEU加盟を目標としているトルコは死刑制度を廃止した。ベラルーシはヨーロッパで唯一の死刑存置国であるためEU非加盟国である。2001年にEUは死刑を存続している日米両国に対し、死刑廃止に向けた実効的措置の遂行を求めている。いま世界で死刑を廃止している国は139ヵ国で、死刑制度を存続している国は58ヵ国である。

   日本では、かつて死刑の決定には永山基準といわれるものは「被害者2人までは有期、3人は無期、4人以上は死刑」という基準があったが、最近では複数、ないし1人の場合でも死刑となるケースがあり、厳罰化の傾向と、過去の判例に比べ著しく量刑にバラツキが生じている。被害者の遺族の感情を重視する日本式の裁判制度は、新しく制度化された裁判員制度でどのように進展していくか不安材料は多い。ドイツはナチスのユダヤ人虐殺の影響があり、イギリスでは冤罪事件の反省から死刑廃止に進んだ。元来、キリスト教国では「十戒」の第六「汝、殺すなかれ」とある根本倫理に由来するものとも説かれることが多い。このような世界的な死刑廃止の潮流のなかで、「死刑は残虐な刑ではない」(憲法36条に違反するものではない、という判例)とする日本の主張との隔たりは大きい。裁判員制度の導入によって、人間存在を真摯に考える者であるならば、日本国民誰しもが「死刑制度の是非」という直面する国民的課題としてつきつけられることとなった。ブログ論壇でも死刑制度存置の是非をめぐって論議が活発化されることが予測される。

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