気になる年齢
「気になる嫁さん」は昭和46年から昭和47年に放送された大ヒット・ホームコメディ。清水家の末っ子・純(関口守)がめぐみ(榊原るみ)と結婚。ところが純はアメリカへ留学、とりあえずめぐみだけ清水家へ暮らすことになる。威厳のない父親呂之助(佐野周二)、生真面目な長男輝正(山田吾一)、行き遅れの長女小夜子(水野久美)、ケチのサラ金の社長文彦(石立鉄男)、オリンピックを目指す三男力丸(山本紀彦)、お手伝いのたま(浦辺粂子)。バラバラの家族がまきおこす不思議な世界。第10話で末っ子の純が留学せく先で亡くなるという悲しい知らせ。ハッピーなドラマにはありえない悲惨な展開。いまから40年前のドラマだが、古いいような、古くないような。日本人の生活文化の移り変わりを考えるには貴重な映像資料だ。たとえば、お手伝いのたまは、スーパーというアメリカかぶれした店では買わない、市場か御用聞きから買っている。めぐはスーパーのほうが安いという。こんな新旧の対立がまだあった時代だ。ところで気になるのは、出演者の実際の年齢。榊原るみ20歳、山本紀彦28歳、石立鉄男29歳、水野久美34歳、山田吾一38歳、佐野周二59歳、浦辺粂子69歳である。おどろくべきことは、佐野周二、浦辺粂子はもっと年齢がいっているように見えるが実際には若い。佐野は70歳近くに見えるが、かなり体力的に衰えていたようで、数年後のドラマ「暖流」で志摩病院の院長役を見たときは本当に弱っているように見えた。ドラマでは退職して(当時55歳が定年)、トランジスターラジオで株を聞くという平均的サラリーマンの老後、パチンコが趣味、だが、いかにも老けてみえる。いまの59歳と40年前の59歳とはだいぶん違う。しかし長い人類史のなかでみるとたかだか40年でそんなに変わるはずはないので、おそらく現代人が自分の老化に気づかないだけで、死は着実に誰にでも忍び寄っているのである。楽しいホームドラマでも、人間そのものの変化ははっきり映像で捉えている。その真実味が面白いともいえる。中盤には小夜子の恋人のカメラマン竹山が突然の交通事故死。なんともシュールなコメディである。ドラマの結末は家庭崩壊、「岸辺のアルバム」の先駆的作品だろう。
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