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2010年2月28日 (日)

岩波書店「世界」の意外性

   「太平洋戦争は我国有史以来未曾有の屈辱的降服を以て結ばれた。我々の前途には暗澹たる不安と混乱とが横はり、国民の一人一人が悉く深刻な受難の唯中に在る。併しこの終戦と同時に、戦争中の無理と虚偽と擬勢と不正とは暴露され、我が国民は今こそ現実に立つて真理を仰ぎ、新たな発足をせねばならなくなった。」岩波書店の総合誌「世界」が創刊されたのは昭和21年1月号からである。以来60有余年、その論文は膨大な量となる。図書館では永年保存にしているものの、このまま保存すべきか、大図書館に保存を委ねるべきか悩んでいる館も定めしあるだろう。

    太宰治、三島由紀夫、石原慎太郎、松本清張、司馬遼太郎。彼らの中で一度も「世界」に寄稿したことの無いのは誰か。答えは、全員一度ないし数度寄稿している。太宰治は有名な「桜桃」が掲載されている。(昭和23年5月号)女優の吉永小百合もある。「シルクロードを旅して」(昭和60年2月号)手塚治虫は「座談会、漫画の世界」(昭和39年1月号)がある。当時、テレビ・アニメーションが始まり多忙な時期だが、どんな話がとびだしたのだろう。このような古い雑誌の面白味がでてくるのは実はこれからなのだ。索引もシッカリしたものができたときに、イザ近くの図書館へ行くと、あれはもう廃棄しました、というのでは情けない思いがする。国立国会図書館にあります、ウェブで閲覧できます、という時代になるのだろうが、貴重な知的文化財を身近で保存するという意識が希薄なのが残念だ。

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