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2010年1月12日 (火)

かつての新鋭現代作家たちが老いるとき

    高校生だった黒井千次は「将来文学をするには何学部に進学したらよいか」という相談の手紙を野間宏に出したところ、「経済学部へ進んで工業の会社に就職するのがよい」という丁寧な返事をもらった。その薦めに従って東京大学経済学部を卒業し、富士重工業に就職し、かたわら小説を書いた。戦後に現われた黒井のような新鋭の作家たちもいまでは80歳前後になっている。学生作家としてデビューした大江健三郎も昨年12月に久しぶりに長編小説「水死」を刊行し健在ぶりを示している。大江健三郎と犬猿の仲といわれる、「雲の墓標」の阿川弘之(90)は戦争世代で一時戦後不遇の時代があったが、現代文壇の長老的存在であろう。(以下、カッコ内は2010年の満年齢) 「どくとるマンボウ航海記」の北杜夫(83)、「アメリカひじき」「火垂の墓」の野坂昭如(80)、「日本沈没」の小松左京(79)、「遠来の客たち」「無名碑」の曽野綾子(79)、「太陽の季節」の石原慎太郎(78)、「蒼ざめた馬を見よ」の五木寛之(78)、「手鎖心中」の井上ひさし(76)、「鶸」の三木卓(75)、「飼育」の大江健三郎(75)、「杳子」の古井由吉(73)などが老大家といえよう。ところがこれに続く世代は昭和11年生まれから20年生まれまでの作家はあまり見当たらない。やはり戦争の惨さを物語るのであろうか。昭和19年生れの椎名誠、昭和20年生れの池澤夏樹、昭和21年生まれの中上健次(平成4年没)、昭和22年生れの宮本輝、立松和平、昭和23年生れの三田誠宏、昭和24年生れの村上春樹となる。現代作家は大きく二つの世代に別れている感じがするのである。

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