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2010年1月30日 (土)

地方紙を買う女

   平成4年8月4日に亡くなった松本清張の小説には携帯電話やインターネットは出てこない。だが最近に放送される清張のドラマ化には必ずといってよいほど携帯電話が出てくる。昨夜放送の松本清張ドラマ「山峡の章」もそうだった。朝川昌子(菊川怜)が妹と心中した夫の真相を調べるため銀座のバーにホステスとして勤める。そこで見つけた夫の同僚外務官僚をケータイで隠し撮りする。その他メールのやりとりなど携帯電話は頻繁に出てくる。われわれ年のいったものが清張のドラマを見ようと期待する何がしかのムードは木っ端微塵に裏切られる。たとえば「地方紙を買う女」という作品がある。甲府・臨雲峡の山林で心中とみせかけて男を殺した女は、死体が発見されたことを知りたいために「甲信新聞」を新聞社から直接取り寄せる。このとき連載中の小説を読みたいという理由をつけたために、小説家から嫌疑を受けるという奇妙な展開ながら、面白い短編である。ところがこれを現代に置き換えることは不可能だろう。ネット検索するから作品が成立しない。だが清張の時代を再現しようとすれば、セットや衣装などで経費はかかる。安くあげるためには、現代に置き換えられる清張作品を見つけることであろう。しかし、清張独自のムードはやはり昭和であってこそ生まれるものだとおもいたい。

    「地方紙を買う女」これまで映画「危険な女」(1959)、ドラマで8回製作されている。ヒロインの潮田芳子は渡辺美佐子(1959)、藤野節子(1957)、池内淳子(1960)、柏まゆみ(1962)、岡田茉莉子(1966)、夏圭子(1973)、安奈淳(1981)、小柳ルミ子(1987)、内田有紀(2007)が演じている。男女2人を心中にみせかけ山中で毒殺した女の話であるが、不幸な芳子の自殺で話は終わる。多くの作品はヒロイン芳子が主役であるが、1973年の夏圭子主演「地方紙を買う女」ではむしろ売れない小説家・杉本隆治(井川比佐志)の心理がよく描かれている。トップ屋・木次(山本圭)と杉本が作家の懊悩を表現しているラストが出色である。俳優座らしい演出といえる。

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