つんどく礼讃
野口米次郎はロンドン滞在中、毎夕4時の時計がなると、雨でも晴れでも下宿を飛び出し、軒並みに古本屋の店先をあさり歩くのを日課とした。しまいにはどこの本屋の何番目の書棚には、何という本があるか、本屋のおやじよりもくわしくなったという。そのころのことを述懐して「この道楽はかならずしも知識欲からばかりではない。書物に対する強烈な愛着心からでたもので、書物のにおいをかぎ、装丁をながめただけで喜んだものだ」と言っている。元来「つんどく」ということばは、まじめな読書家からは軽侮の念をもってみられるかもしれないが、それを読まなくても、その中からかもしだされる、雰囲気に陶酔することも、愛書家の三昧境というものであろう。
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