ロチェスター卿のモデルは誰か?
外国の女の子に好きなタイプを聞くと、大概は文芸作品上の人物から答えてくるそうである。例えば、ヒースクリフとかジュリアン・ソレルとかレッド・バトラーとか。そんな中でロチェスター卿という人物もかなり人気がある。あまりハンサムなイメージはなかったので意外だった。
シャーロット・ブロンテ(1816-1855)は1847年にカラー・ベルという筆名で「ジェイン・エア」を出版した。生まれて間もなく両親を失ったジェイン・エアは、冷酷な叔母のもとで子ども時代を過ごしたあと、さまざまな人生遍歴をして、ロチェスター卿と結ばれる。原作に書かれたジェインは「ちびで、血色がさえない上に、不細工で、ひと癖もふた癖もある顔」をした家庭教師ということだが、愛と自由を求める情熱の女性として現代女性の支持をうけ、何度も映像化されている。1度目はジョーン・フォンティンとオーソン・ウェルズ(1944年)2度目はスザンナ・ヨークとジョージ・C・スコット(1970年)3度目はズィーラ・クラークとティモシー・ダルトン(1984年)4度目はシャルロット・ゲンズブールとウィリアム・ハート(1993年)5度目はルース・ウィルソンとトビー・スティーヴンス(2006年)。キャスティングは次第に美男美女化しつつあるように思える。ところでロチェスター卿のモデルは誰だろうか。シャーロッテ・ブロンテはブラッセルの学校で指導を受けた妻帯者のエジェに特別な感情を抱いていたことが知られている。おそらくこのエジェがロチェスターのイメージとなっているであろう。ただ敬愛する作家サッカレー(1811-1863)にはロチェスターの狂った妻と同じ状況にある細君がいたため、一時「ジェーン・エア」の作者はサッカレーの情婦ではないかという噂が流れたことがある。
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