変節漢
もうはや今年も一年を回顧する季節になったが、やはり雑誌の休刊が相次いだことが印象的である。とくに総合オピニオン雑誌「諸君!」(文芸春秋)は6月号で休刊した。創刊は昭和44年6月という。たしかに総合誌はあまり若い読者はいないし、書き手も多くは亡くなり、近頃の大学の学者たちはあまり過激な論文はないように思える。そのため「論座」「月刊現代」そして「諸君」と消えていった。「諸君!」は「正論」と並んで保守オピニオン誌の代表誌である。休刊を惜しむ人、歓迎する人、さまざまであろう。わたしは政論に無関心であるが、そのむかし清水幾太郎(1907-1988)が「日本よ国家たれ、核の選択」(諸君1980年7月号)が掲載されたときは衝撃的であった。清水幾太郎といえば、何といっても戦後の「反基地闘争」「反安保闘争」などをリードした進歩的知識人の代表であった。「転向」「変節漢」などの声が聞かれた。だが思想の世界は、基本的にとどまるも良し、変転するも良し、一個人の自由であろう。
「日本も世界も猛烈な勢いで変っている。日本の高度成長にしても、終戦直後の日本人に想像もつかないことだった。・・・・Aの時点で言ったことと、Bの時点で言うこととは、同じことであろうはずはないですよ。隠居してしまえば別ですがね・・・・」清水はこのように言っている。それから社会主義国のソビエトが解体した。大国がもろく崩壊するのを初めて見た。凡人はあとで知る。清水クラスのインテリは先を読む。清水ほどではなくても、身近にいる全共闘世代も変節するのが得意だ。むかし館長を難癖をつけて攻撃しておきながら、30年後のいま自らがその職にいる。当人にはそれなりの理由づけがなされるのだろうが、端で見て知っている者にはどうにも官の無定見さが愚かしく思える。人生、隠居するのが一番である。
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