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2009年10月30日 (金)

岸辺のアルバム

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  昭和49年9月、台風16号の影響で増水した多摩川が決壊した。3日間に民家18戸が流出した。この出来事に着想をえた脚本家・山田太一は東京新聞に連載小説「岸辺のアルバム」を描いた。本作がTBSの目に留まってドラマ化された。これまで昭和40年代のテレビは明るいホームドラマの全盛期であったが、妻の浮気という負の面とマイホームの喪失というインパクトのある二要素が物語の骨格となっているのは衝撃的である。家が川の氾濫で流されることは、タイトルバックで当初から視聴者に知らせている。つまりどのようにして平凡な家庭が崩壊していくかを予告しているのである。このドラマは名作としてあまりにも有名である。シナリオライターを目指すものには教科書のような筋の展開である。またキャスティングがこれ以上のものはありえないというほどの絶妙さがある。当初、八千草薫の役は岸恵子が予定されていた。プロデュサーの堀川とんこうは岸恵子では平凡な主婦という感じがしないとして、強力に八千草を押したといわれる。脇役も光っている。とくにヒロイン八千草薫の友人・原知佐子の存在は重要であろう。良妻賢母、そしておとなしい感じの八千草が竹脇無我と単なる話相手の友だちから浮気の相手へと一線を超えるには何かの契機が必要である。原は重い病気で入院している。八千草は見舞いにしばしば病院を訪れ、若い男性と交際していることを話す。すい臓ガンと死の宣告をされた原は最後に八千草に自分も浮気をしていることを告白する。相手はなんと大学生。別れの話を八千草にことづけて死んでしまう。その大学生は単なる金めあての遊びで八千草は女の人生の儚さを感じる。生きている間、もっと人間らしい自由な生き方をしたいと考えるようになる。内気で世間知らずな女性だけにかえって思い切った行動に走ることがある。このように話の展開が自然にはこばれている。その大学生を演ずるのは穂積ペペ。かえるの風邪薬で有名に子役タレント。青年になって「飛び出せ青春」では、ダメな高校生。そしてこのドラマではイカレタ大学生。そういえば村野武範も杉浦直樹の生意気な部下として出演している。そして「ずうとるび」の新井康弘。歌手デビューして3年目、歌手がダメなので女優に転身したばかりのカワイイ風吹ジュン、と脇役が見逃せない。

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