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2009年10月28日 (水)

インケツの政

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    映画「秋深き」(池田敏春監督)は織田作之助の短編「秋深き」「競馬」を映画化したものである。とくに「競馬」の筋をベースに現代に置き換えている。原作は青空文庫で読むことができるらしい。ここでは「競馬」と映画との共通事項を取り上げてみる。

   「競馬」の主人公・寺田は小心者の教師。実家は仏具屋。見初めた女・一代は癌で死ぬ。競馬で迷いもせず「1」の数字を買う。映画では「1-4」の馬券。病気快癒のため神社などお百度参り。映画ではインチキの壺を買う。かつての一代の愛人「インケツの政」という男。映画では佐藤浩市が演じる。

   つまり映画と小説とでは大きくことなる。当然、テーマも違う。これは織田作之助の遺族側との話し合いで改変が可能だったのだろうか。ともかく原作を自由に変更しても、なおかつ原作の味があるというのは異例のことである。とくに「インケツの政」の存在は映画のほうがウェートが大きい。

「そんなある日、一代の名宛で速達の葉書が来た。明日午前11時、淀競馬場一等館入口、去年と同じ場所で待っている。来い」とある。葉書いっぱいの筆太の字は一代を自由にしていた男にちがいない。淀競馬場にいた男を寺田は再び浴室で見つける。背中に「一」という刺青がある。炭鉱のあらくれ坑夫が、稚児いじめに刺青をさせられたのだ。オイチョカブ賭博の一(インケツ)、つまりこの札を引けば負けと決まっている「インケツ」の意味である。競馬の好きないい女を知っている。よせばいいのに教師などと世帯をもったのはばかだった。

    原作に登場する「インケツの政」はこの程度の扱いである。織田作之助の「競馬」はタイトルどおり競馬小説のようで、夫婦愛があまり感じられなかったが、映画「秋深き」には切ない愛情が十分に表現されているように思う。

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