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2009年10月18日 (日)

八木保太郎

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    戦後、生活綴り方教育で知られた無着成恭の編集した「山びこ学級」は山形県山元村の新制中学校の生徒たちの作文集「きかんしゃ」がもとになっている。本書は未読だが、先日その話をもとにした映画「山びこ学級」(今井正監督)を見た。むかし見たように思うが、改めて見て感心した。シナリオがいい。とくにみんなで「トンコ節」を合唱するところが。おしつけの道徳教育ではなくて、生活の中で自ら問題意識をもつことの大切さを強調している。その教えがトンコ節のエピソードにあらわれている。芸者のお座敷ソングが当時流行っていた。田舎の子供たちもラジオで聞いて知らぬものはない。だがなぜ芸者は帯をとかねばならぬのか、どういった境遇なのか、考えてみよ。東北はむかしから貧しさから娘売りが流行った。戦後もまた娘売りがでているという。娘は都会にでてどうなるのか。そうするとこの流行歌にも東北の現実があらわれている。歌詞の意味をよく理解してみよう、ということだ。生活教育が映画の全編にみなぎっている。この映画はおそらく劇団民芸が舞台で先にやって好評だったので、映画化されたのだろう。主演は木村功だが、ほかにも滝沢修や北林谷栄など名優がずらり出演している。民芸では下元勉が青年教師を演じていた。シナリオは八木保太郎(1903-1987)という日本脚本界の大物である。満映時代からのベテラン脚本家の壮年時代、油ののった傑作なのだ。脚本とはこういうものだというお手本ともいえる。昨今、NHK連続テレビ小説の脚本が低下している。ただ面白そうな話をつなげただけでは人のこころにひびかない。いまの脚本家は登場実物のキャラクターを設定して、あとはキャラクターが自然に動き出す、などということをよくいう。デタラメな話だ。ドラマには1本筋の通ったところがないといけない。木村功の青俳時代のNHK「アイウエオ」(脚本・早坂暁)は明治百年を記念したドラマだったが内容もすばらしかった。ギャラクシー賞を受賞している。ドラマはシナリオが大切だ。

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