ウンラート教授のレファレンス教室
ウンラート教授は場末の踊り子ローラに恋をして、落ちぶれて、昔の学校に夜間忍び込んでノタレ死ぬ。ケペルもむかし図書館員なので、レファレンスを懐かしんで何故か自分で質問を創り上げて、ネットをつかわずにレファレンス・ブックで調べるようにしている。たとえばこんな問題。
「貧しい農家に生まれた中村某という娘が叔父にだまされ曲芸団に身売りをさせられ、辛酸をなめ、教会に放火をするという小説はだれの何という作品か?」というレファレンス事例。つまり小説の内容でたずねられた場合、作品を読んでいなければ、思いつかないだろう。キーワードは作品に登場する架空の人物名であることが多い。ここでは「中村某」。このレファレンス・ツールとしては「日本文学作品人名辞典」吉田精一、河出書房、昭和31年刊行が挙げられる。日本の文学作品に登場する架空人名事典で約2000人を収録している。もちろん昭和30年以降の作品は収録されないので、今では誰も利用しないだろう。本書で中村姓を調べると、「中村すみ子」が考えられる。作家は藤森成吉(1892-1977)。作品名は「何が彼女をさうさせたか」である。この作品はもともと築地小劇場で昭和2年、上演されて好評を博して、昭和5年には帝国キネマで映画化されている。いわゆる傾向映画といわれた。この一作で高津慶子はスターになった。「何が彼女をさうさせたか」は戯曲であり、小説化されたという事実はない。国立国会図書館のHPで資料検索すると、戦後の角川文庫に収録されているが戯曲のようである。(参考:長沢雅男「レファレンス・ブック」1974)
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