戦後の或る小図書館の研究(守屋図書館の場合)
昭和22年、東京都目黒区にあった柿之木坂旧町会事務所は、柿之木坂文庫に改装された。図書館施設なのに名称を文庫としたのは、図書館令(図書館法制定前の法令)に基づき種々規定が設けられ、一つでも欠けると認可されないためであった。僅か20数畳の居間の回りに簡単な本棚があり、席は六尺机を4つ備えて、30名ほどが利用できる。利用方法は受付で住所氏名を記載すれば、自由に図書を選び読むことができる。昭和24年には宮ヶ丘文庫が設立された。宮ヶ丘文庫の運営規則は次のとおり。
閲覧時間:午前9時から午後5時まで
閲覧料:1回1円
休館日:毎週月曜日、国民の祝日、毎月14日(館内整理のため)
昭和27年4月には、柿之木坂、宮ヶ丘文庫を一ヶ所にまとめて、目黒区立守屋図書館が誕生した。創設時の守屋図書館は台湾日日新報の創業者・守屋善兵衛(1866‐1930)の邸宅を整備したものである。1階には一般閲覧室、集会室、事務室、書庫がある。2階には30畳のタタミの間の児童読書室と新聞雑誌室がある。また4畳半の和室は児童研究室として使用されていた。このような小図書館の歴史であるが、文庫から図書館へ、閲覧料の有料制から無料化へ、昭和20年代の公共図書館の発展の軌跡が典型的に現われている。
(参考:「目黒区の図書館、目黒区立図書館創立四十周年記念資料」)
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