平安朝の言葉遊び
わが国では「嵐」という漢字は「山から吹く激しい風」という意味ですが、中国本来の漢字の意味は「山の清らかな風や空気、山気、もや」のことです。「嵐影湖光」(らんえいここう)という四字熟語の意味は「青々とした山気と湖の輝き、山水の風景のこと」です。つまり「嵐(もや)」の意である漢字を日本では強風、暴風雨という意味に宛てたことになります。百人一首の文屋康秀の歌にも「むべ山風をあらしといふらむ」とあります。文屋康秀は生没年不詳でずが、清和天皇、陽成天皇、光孝天皇ごろの人だと思われます。おそらく9世紀末の人でしょう。平安時代の都では盛んにこのような言葉遊びが流行っていたのでしょうか。江戸時代の都都逸に「恋い戀という字は、いとしいいとしいと言ふ心」とか「松という字は、きみ(公)とぼく(木)との差し向い」があり、文字遊戯がお座敷で喜ばれました。アン真理子の「明日という字は明るい日と書くのね」(「悲しみは駆け足でやってくる」)も同類か。
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