青衣の女人
鎌倉時代のある時のこと、集慶というお坊さんが東大寺の修二会(三月に行われる厳しい行法)で、過去帳を読み上げていると、青い衣を着けた美しい女の人がすうっと闇の中から現れた。そして、いかにも恨めしそうな細い声で「どうして、私の名前を呼んでくださらないのですか」と言った。女人禁制の場所に、このような女の人が現われるわけがない。集慶は余りのことに幻かと自分の眼を疑った。集慶は咄嗟に低い声で、「青衣の女人」と読み上げた。すると、美しい女人は、いかにも満足したように微笑をうかべて、闇の中へ消えていった。修二会の「東大寺上院修中過去帳」には、この名も分からない「青衣の女人」の名が加えられ今もなお読み継がれているという。
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