秋岡梧郎と安全開架
秋岡梧郎(1895-1982)は明治28年、熊本県下益城郡豊福村大字竹崎で生まれる。大正8年、熊本県下益城郡教育会明治文庫司書となり、生涯図書館活動に従事する。大正11年、日比谷図書館に就職後、麻布、両国、京橋の各主任を経て、昭和6年、京橋図書館館長に就任。以後深川図書館、江東図書館などを歴任する。
秋岡梧郎の功績で知られることは、当時閉架制が全盛であった図書館で、昭和4年から京橋図書館で開架式(安全開架)を実践したことであろう。安全開架式とは、開架式(接架式)の一種で、書庫と閲覧室を区画し、利用者は書庫には自由に出入でき本を選択できるが、閲覧室で本を読むとき、あるいは、貸出をうけるとき書庫・入口カウンターで館員のチェックをうける。館員のチェックをうけず自由に書架から図書を出し入れできる閲覧方式が自由開架式といわれている。
秋岡梧郎の図書館人生で学ぶことは生涯実践者であることであろう。ともすれば図書館界においては図書館学の研究論文や著書の膨大さを誇る傾向があるが、何らの現場実践なく海外の文献を翻訳して図書館学者として事足れりとする弊風が見受けられる。最近でも若い図書館研究者が海外調査に行き外国の図書館事情の報告をして一定の成果を拝聴したが、大学では研究者は養成するが、実践者は養成できない。87歳にわたる秋岡梧郎の人生は文庫に始まり文庫で終っている。晩年、邸内に私設図書館を開設している事など実にほほえましいものである。(参考:「秋岡梧郎著作集」日本図書館協会)
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