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2009年7月31日 (金)

納豆売りの少年

Img_0008 マッチ売りの少女 茂田井武 1946

   終戦の年の寒い冬の日のことであった。挿絵画家の茂田井武は、「マッチ売りの少女」の挿絵を頼まれた。大好きなアンデルセンの童話だ。何時になく張り切って数枚描いてみたが、どうしても少女の表情が上手く描けずに悩んでいた。そんなとき、2人の娘たちの無邪気な笑い声が聞えた。「毎朝売りに来る納豆売りの少年、冬でも薄着でおんほろの服なのよ」「こないだは鼻水たらしていたわ」「たべもの売っているのきたないね、アハッハ…」それを聞いてた茂田井は娘たちを厳しく叱った。当時は、父を戦争で失い、納豆売りで母親を助ける子供たちもおおかった。そして茂田井は「まだ納豆が残っているのなら、全部買ってあげなさい」といってアルミの器を姉に渡した。姉妹たちは父のやさしい言葉を聞いて、喜んで買いに出かけた。そのとき、茂田井の脳裏にマッチ売りの少女が現われた。純真無垢なその表情は、いまも観るものの心の中に灯をともし続けている。

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