お夏清十郎の墓
姫路本町の目抜き通りに店を構える米問屋の但馬屋九左衛門。その娘にお夏という16歳の春を迎える美しい娘がいる。男を選り好みしてなかなか縁談が決まらない。ある日、新しい手代が雇われた。それが清十郎である。まじめな仕事ぶりで主人の信頼を得る。ある時、仲居が清十郎の帯をくけ直していると、中から室津の遊女たちの恋文が山と出てきた。かくも女を酔わせた清十郎とはどんな男かと興味をそそられたお夏は、たちまち恋におちる。純真で一途な思いが清十郎にも通じ、二人は手に手を取って駆け落ちする。飾磨津から上方へ。だが「向ふ通るは清十郎ぢゃないか。笠がよく似た菅笠が」と唄に歌われ、船は一里ばかり沖へ出たところで港に戻り、二人はあえなく追っ手に捕らえられる。折りしも、但馬屋では700両の金が紛失。清十郎は身に覚えのない横領とかどわかしの罪をきせられ処刑される。お夏は子供たちが「清十郎殺さばお夏も殺せ」と歌うのを聞いてようやく清十郎の死を悟り、狂いさまよい、夜ごと清十郎の塚に参る。お夏は自害しきれず、尼となり、清十郎の菩提を弔うのであった。(小豆島に縁づいたという説もある)
今日の朝日新聞夕刊によると、水間寺(大阪府貝塚市)境内の愛染堂の前に「お夏清十郎の墓」があるという。愛染明王は恋愛染着の至情を本体とする明王で、祈る者に敬愛の徳を授け縁を結び福を与えるという。この愛染明王は行基が椿の木に刻んだものといわれる。約700年前、水間の豪農楠右衛門の娘、お夏がこの愛染明王に祈願し、勅使であった山名清十郎との恋を成就させたといわれる。墓に備え付けられている花立てには田中絹代と林長二郎の名前が刻まれている。映画「お夏清十郎」(昭和11年)を記念したものであろう。
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