国家権力と自然法との上下関係
近代国家においては、すべての政治は原則として法によって行なわれる(法治国家の原則)。ところが古代においてはローマ帝国の場合、「君主は法に拘束されない」とか「君主の欲するところは法の効力をもつ」という法諺が示すように、イムペリウムは絶対的な権限として考えられていた。
中世のローマ教会が支配する時代になると、トマス・アクィナス(1225-1274)が体系化した自然法は、「理性的被造物によって分有された永遠法」であり、神法的性格をもつ。ゆえに、自然法は実定法を制約する。そこで、かりに「君主の欲するところが法である」としても、その法は実定法にほかならないから、自然法による制約を受ける。したがって、君主もまた自然法の下位にあると考えられた。
これに対してトマス・ホッブズ(1588-1679)は、自然法とは人間が快適に生きるための条件であり、自然権の確保のために人間が必要としする条件であるとした。そのため契約によって全権を主催者にゆだねて国家を造ったとする一種の社会契約説が生れるようになる。ホッブズは近代的法の支配の主唱者であるといえる。
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投稿: | 2012年5月 9日 (水) 07時31分