へなちょこ商売が面白い
世界経済が不況で大企業も個人経営者も厳しい状況にある。そんなときに素人が珍商売をすることは無謀といえるかもしれない。文明開化の明治にはいろいろ変わった商売が登場したそうだ。戦後の焼け跡のバラックにも珍商売があった。いつの時代も都会の片隅に時代に取り残されたような店がある。これから小さな店をいろいろ調べてまわることも楽しい。本の世界でいえばサブカルチュアーを扱うことが面白い。古美術でなくて、古道具のほうが面白い。村松友視の「時代屋の女房」の映画版をみて、その世界に興味を持つ。大正時代の扇風機、古い小型ミシン、SP用のラッパ付き蓄音機、手動式の電話機、煤っぽいランプ、貧乏徳利と盃、日露戦争の勲章など。
夏の盛りに銀色の日傘をさし、ピンクのTシャツを着た若い女が店に入ってくる。「これは・・・・」女がめずらしそうに取りあげたのは、美大の友だちからあずかった物だった。「なみだ壺っていうらしいですよ」「なみだ壺って・・・」「イランだかトルコだか忘れたけど、兵士が戦場へ出ていったあと、女房がこのなみだ壺を目にあてて悲しい涙をためておくんだって」「で、亭主が帰ってきたら、こんなに泣いて待ってましたって見せるわけね」「そうだろうね」「こうやるのかしら」女は、なみだ壺の先端を片目に当てた。なみだ壺はその女に似合っているように思えた。
夏目雅子の有名な映画のワンシーンである。
ところで「へなちょこ」の言葉の由来がまた面白い。日露戦争の戦勝祝いのために12、13人の文人、学者が神田明神境内の開花楼の一室に集った。その席で、某氏が昌平橋近くの工事現場でもらってきた粘土で手づくりの盃をつくったところ、皆、妙な形のものばかりできあがってしまった。ヘナ土(粘土)でつくった猪口だからヘナチョコだが、おかしな形のものばかりだったので、未熟なものをヘナチョコというようになった。
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