無料ブログはココログ

« 悪ふざけ好きの少年皇帝 | トップページ | プレンダーガストとジ・エイト »

2009年3月16日 (月)

新聞小説家山本有三

Img_0017

      山本有三青少年文庫の閲覧室風景

  真実一路の旅なれど

  真実、鈴ふり、思い出す

                白秋「巡礼」

   北原白秋の詩で始まるこの有名な山本有三(1887-1974)の小説「真実一路」をはじめ「路傍の石」「波」「生きとし生けるもの」を文庫本で読んだのは中学生ころだっただろう。もちろん主人公の義夫や吾一などの正義感やヒューマニズムに共感を覚えた。だが長じて高校生になる頃、彼が戦時中、近衛文麿と親しい関係にあることや、戦後保守政治家になったことなどを知ると、熱も急速に冷めてしまった。宮本百合子は山本の諸作品を、社会問題を扱うとみせかけて、根本的な問題を棚上げしている、という鋭い指摘をしている。おそらくこれが今日的な作家山本有三に対する一般的な評価であろう。しかし彼の小説の多くは新聞の連載小説として発表されたものが多く(「生きとし生けるもの」「波」「風」「女の一生」「路傍の石」)、いかに大衆に支持され、大きな影響を与えたかはいうまでもない。昭和33年、東京都三鷹の旧居が「有三青少年文庫」として開館されたことは夙に知られている。ケペルが蔵書を一般に開放して文庫を開くことも、つまりは少年期に読んだ山本有三への共感があったからかもしれない。

   勇気を自慢しあって、鉄橋にぶらさがった吾一を次野先生にやさしく諭す。「愛川、おまえは自分の名前を考えたことがあるか。吾一というのはね、われはひとりなり、われはこの世にひとりしかないという意味だ。世界に、なん億の人間がいるかもしれないが、おまえというものは、世界中に、たったひとりしかいないんだ。そのたったひとりしかいないものが、汽車のやってくる鉄橋にぶらさがるなんて、そんなむちゃなことをするんじゃない」

    山本有三は、「光をもとめることが生あるものの本性である」という根本思想にたって、人間いかに生きるべきかを一貫してテーマとした作家であった。

« 悪ふざけ好きの少年皇帝 | トップページ | プレンダーガストとジ・エイト »

女性の書斎」カテゴリの記事

コメント

吾一少年の「真実一路」の原点は先生の言葉・・いいですね。そうか、そうだったか・・

一首献上。

真実の路ははてなくわが前につつくを見たり
少年の日に
              石塚邦男

山本有三の保守主義は、文部省の道徳教育の模範解答作品のようなもの。

少年少女教育には有効であるかもしれないが、ある面では落とし穴があるという性格のものだろう。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 悪ふざけ好きの少年皇帝 | トップページ | プレンダーガストとジ・エイト »

最近のトラックバック

2017年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30