映画「黄昏」
むかしの洋画は、邦題が漢字二文字の大人のメロドラマが多かった。「哀愁」「慕情」「旅愁」「旅情」「旅路」「悲愁」などなど。
ウィリアム・ワイラーの映画「黄昏」(1951)はセオドア・ドライサー(1871-1945)の小説「シスター・キャリー」が原作となっている。ワイラー監督は本来「嵐ヶ丘」「女相続人」など文芸物を得意としている。ところが「ローマの休日」のロマンチック・コメディ、「ベン・ハー」の歴史劇、「コレクター」のサイコなどジャンルの広さに驚かされる。
「黄昏」はワイラーの作品の中ではとりたてて高い評価を受けてはいない。あまりに悲劇的なため興行的には失敗だったろう。しかしながら演技者オリビエとジェニファー・ジョーンズの共演など見所は多い。ストーリーは中年の男が美しい女性のため人生を破滅するという往年の名作ドイツ映画「嘆きの天使」に近いものがある。なぜ「嘆きの天使」があのように成功をおさめ、「黄昏」は失敗したのだろうか。ローラは魔性の女であったが、キャリーは情が深く、善人であったことで、筋立てが凡庸になった感がある。
シカゴへ出てきた田舎娘キャリー(ジェニファー・ジョーンズ)が妻子ある高級レストランの支配人ジョージ・ハーストウッド(ローレンス・オリビエ)と出会う。二人はニューヨークへ駆け落ちをして安アパートで暮らしはじめる。たがジョージの新しい仕事先はなかなか見つからず落ち込む。そんなときキャリーの言葉がいい。「ジョージ。買い物に行ってきてちょうだい。牛乳1本と新聞、それに葉巻を」。それを聞いてジョージは「君はすばらしい人だ」と抱擁する。そのような日常的な言葉でやさしいを表現することはちょっと今のテレビなどでは見られないシークエンスであろう。ドライサーの原作にあるものなのか、ウィリアム・ワイラーによるものか、ルース・ゲイツ、オーガスタ・ゲイツの脚本によるものか知らないが、この悲劇的な原作の中でもイイ台詞はある。
ちなみにジョージの因業な正妻を演じている女優はミリアム・ホプキンスという。若い頃、エルンスト・ルビッチの「陽気な中尉さん」「極楽特急」「生活の設計」などのコメディで粋な演技を魅せていた。いまDVDでめずらしいものが見れてありがたいものだ。
« アントネッロ・ダ・メッシーナ | トップページ | 女は年を重ねて輝く »
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 夫婦と16歳(2026.07.05)
- 夏の新ドラマ紹介 2026(2026.07.14)
- 夫婦共演(2026.05.05)
- 天泣の教室(2026.05.04)
- 万福丸と万寿丸、そして於市の方(2026.04.30)



コメント