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2009年1月22日 (木)

裸体表現の自由と映画芸術

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   「ヴィーナス」  ジョルジョーネ

    人類は原始時代以来、ヴィーナス像など裸体芸術を創作してきた。とくに古代ギリシア人たちによって生み出された裸体芸術は、主に彫刻であったが、身体を幾何学的原理に基づいた完全なる美しさのヌードを創り上げ、古典古代の芸術を最高の水準にまで高めた。ちなみにわれわれ日本人は「ヌード」と聞くと、ご婦人方は顔を赤らめ、嫌らしいと感じられるかもしれないが、実は英語には、はだか(naked)と裸体像(nude)と二語は区別されており、ヌードという語は教養ある使い方をすれば、別に不快な響きを伴わないそうである。(ただし、いまだ日本で日常会話で使うのは要注意である)

    ギリシアの裸体表現は、ヨーロッパにおいてはイタリアの文芸復興期に、とくに絵画形式によって裸体が芸術の中心主題として取り上げられてきた。ヨーロッパの裸体表現は近代のルノアールの水浴などに代表されるように、今日美術館で猥褻性を指摘されることなく普通に観賞が可能である。数年前、大阪市が購入したモディリアーニの「髪をほどいた横たわる裸婦」は誘うような挑発的な裸婦の陰毛が描かれているとして、展覧会から一時撤去されたエピソードなどあるが、概ね絵画のように人物が動かないものは陰毛が描かれていても猥褻と判断されず、芸術作品としての扱いを受けるようである。ところが写真や映画となると猥褻性を指摘する人は多い。むしろ近年、性犯罪と関連づけてポルノ規制の強化の動きが目立つ。日活ロマンポルノの時代を青春だった人は巷に扇情的なポルノ映画のポスターは日常的風景だった。陰毛はタブーであったが、ボカシや黒マスクが入りながらも見ていた。平凡パンチやプレイボーイのヌードも陰毛はタブーであったが、局部を林檎で隠したヌード写真が話題になった。篠山紀信の激写もヌード写真に大きく貢献したと思う。1980年代にはビニールに入れられたビニ本が書店を賑わした。1990年代にはヘア・ヌードという和製英語も生まれ、週刊現代、週刊ポスト、ヘア・ヌード写真集などがブームになった。しかし、イメージを重視する企業側からの反発もあってヘア・ヌードは沈滞する。また1999年施行の児童ポルノ法によって未成年の裸体表現が事実上禁止された。雑誌の販売部数は激減し、映画においても女優の裸体演技はほとんど見られなくなった。1970年代スター女優のヌードは常識の感があった。「愛の嵐」のシャーロット・ランブリング、「ラスト・タンゴ・イン・パリ」のマリア・シュナイダー、「O嬢の物語」のコリンヌ・クレリー、「エマニエル夫人」のシルビア・クリステル、「続エマニエル夫人」のカトリーヌ・リベ、「青い体験」のラウラ・アントネッリ、「家庭教師」のオッタビア・ピッコロ、「甘い暴走」のジャクリーン・ビセット、「さらば夏の日」のジャネット・アグラン、「昼顔」のカトリーヌ・ドヌーブ、「茂みの中の欲望」のジュディー・ジースン、「姉妹」のナタリー・ドロン、「わらの犬」のスーザン・ジョージ、「ふたりだけの恋の島」のオルネラ・ムーティ、「欲情の島」のローズマリー・デクスター、「エヴァの恋人」のミレーユ・ダルク、「愛の終りに」のミリュエル・カタラ、「続青い体験」のクラウディオ・カッシネッリ、「危険旅行」のミムジー・ファーマー。近年亡くなった「フレンズ」のアニセー・アルビナや「ジェレミー」のグリニス・オコナーなど少女の初々しい裸体は永遠に脳裏に浮かぶ。このほかシャロン・ケリー、サンドラ・ジュリアン、クリスチーナ・リンドバークなど本格的なポルノ女優もたくさんいたであろうが品行方正な青年だったので残念ながら未見である。

   むかしフランス映画に「舞踏会の手帖」という作品があった。若い日の華やかりし頃の思い出を胸に抱き、昔の女性に会いに行く。そこで儚い人生の現実を知る。いま時代は規制の方向にすすんでいるので、かつての素晴らしい自由な時代ではない。せめてむかしの思い出を大切にしておきたい。だがこの調子でいくと近未来社会には、過去や思い出を語ることすら国家が規制する管理体制が到来するかもしれない。

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   アニセー・アルビナ

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