吉野作造と中沢臨川
吉野作造記念館(宮城県古川市)に「サイン入りのうちわ」が所蔵されている。吉野作造(1878-1933)の友人である文芸評論家・中沢臨川(1878-1920)は大正9年8月9日に41才の若さで結核により亡くなったが、吉野ら友人たちが翌年の一周忌に集ってサインしたものである。
中沢臨川は長野県伊那郡南方村(現・中川村)で生まれ、第二高等学校を経て東京帝国大学工科を卒業した異色の文芸評論家である。中沢と吉野とは大正4年結成された大学普及会という、大学の社会化を目的とする国民教育運動で共に活動した。うちはには、同じく大学普及会で活躍し、戦後初代最高裁判所長官となった三淵忠彦(1880-1950)、中沢の松本中学時代の一級下で詩人の吉江喬松(吉江孤雁1872-1950)、龍土会で交流した田山花袋(1871-1930)、島崎藤村(1872-1943)の名前が見える。中沢は大正期論壇ではトルストイやニーチェの紹介など新理想主義者として活躍し、自然主義文学にも好意的な立場をとった。
中沢臨川
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京都の臨川書店と同氏の関係を教えてください。
田山花袋のファンです。
投稿: 阿部敏広 | 2011年3月20日 (日) 16時42分
京都の学術出版社・臨川書店の命名者は郭沫若だそうです。命名の由来は、加茂川のすぐそばにあること、つまり川に臨んでいること、郭沫若の尊敬する王安石が江西省臨川の人であること、そして郭の郷里の川の名前も臨川であったことから名づけられたそうです。
投稿: ケペル | 2011年3月20日 (日) 18時40分
ありがとうございました。ずっと気になっていた事が分かりすっきりしました。臨川書店が花袋全集28巻の完全復刻版を出してくれていますので、同書店に感謝しています。
投稿: 阿部敏広 | 2011年3月21日 (月) 07時35分