石の民間信仰
滝尾神社の子種石
日本では石に神霊がこもるという信仰は、古来から顕著なものである。現在でも民間信仰で石を依代としている神々が多い。出産の時の産神、塞の神、エビス神など多数あり、氏神の中にも石を神体とするものがある。大きな神社の中には御神体は石であると伝えられてきたものがある。石は単に神の依代として神聖視されるばかりでなく、石そのものも霊異あるものと信ぜられ、小さな石が急に大きくなったり、子生石といって石がわれて子石を生み出す伝説が語られている。
日光ニ荒山神社の別院で女峯山の女神である田心姫命(たごりひめのみこと)を祀る滝尾神社の奥の境内には、「子種石」と名付けられた大きな岩がある。子宝安産の石として知られ、無数の小石が積まれている。
巨石への信仰は古代からイギリス、フランスはじめ、インド、中国、朝鮮にも巨石記念物として多数見られる。とくに朝鮮では支石墓をコインドルと呼ばれ、その数は最も多い。
巨石への信仰とは別に小石を積み重ねる積石、小石を並べる置石の習俗も世界各地でみられる。神社の鳥居の上ある小石など日本では一般的である。また山頂とか登山道の傍らなどに小石が積み上げられていることがある。もともとはアイルランド語でケルン(cairn)といい、本来は「石に築いた塚」という意味であったが、近代の登山の普及によって山頂標識、登頂記念、あるいは登降路を示すためにつくられる積み石をさすようになった。映画「シンドラーのリスト」では、シンドラーに命を救われたユダヤ人たちが彼の墓前に小さな石を積み上げていた場面がある。ユダヤ人にとっても石は不変不滅の象徴で石を積むという行為は、信仰や希望と深く結びついている。
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