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2008年11月29日 (土)

ラ・ロシュフコオ「箴言と考察」

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   フロンドの乱(1648-53)に敗れ、失明に近い痛手を負ったラ・ロッシュフーコー(1613-1680)は、サブレ侯爵夫人のサロンにおいて、ラ・ファイエット夫人との交友の間に、人間に関する厭世的で鋭利な箴言集をつくった。「箴言と考察」(1665-78)である。この本は岩波文庫版でケペルの書棚にもあったが、一度も読んだことがなかった。何故「箴言と考察」を取り出したかというと、文藝春秋11月号の特集に「死ぬまでに絶対読みたい本、読書家52人生涯の一冊」に選ばれているからだ。選者は関西大学教授・竹内洋(たけうちよう)。顔写真があるので思い出した。当時、先生は30歳の若い人だったが、偉い学者になっていたことを知らなかった。専門は社会学で、一般教養の社会学の講義を聞いた覚えがある。実はずっと名前を「たけうちひろし」と誤って覚えていた。なんでも高校時代に先生から「箴言と考察」をいただいたが、読んでみると性悪説、厭世主義に溢れていて、なぜ先生が贈られたのか未だに謎だという話が書かれている。

   「われわれの美徳は、ほとんど常に、仮装した悪徳にすぎない」、「われわれが美徳と見做すところのものは、しばしば、運命か、さもなければ、われわれ人間の術策がしかるべく切り盛りするさまざまな行為と、さまざまな利害関係との集まりにすぎない。だから、男が勇敢であり、女が貞節であるのは、必ずしも、勇気なり貞節なのがそうするのではない」などは人間観察の鋭さを示すもの。「老いる術を知る人はほとんどいない」、「太陽も死も直視することを得ない」となると、そこにはもう皮肉や警句はなく、ただ人間の限界を見つめる眼があるばかりである。しかも、この一般論の大家は、「個々の人間を知るよりは人間一般を知ることのほうがたやすい」ことをもわきまえていた。

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