歌笑と痴楽
ケペルは落語はほとんど聴かないが、子供の頃、好きだった落語家が一人いる。柳亭痴楽(1921-1991)だ。顔をくしゃくしゃにして、節を付けて話す。「柳亭痴楽はイイ男。鶴田浩二や錦之助、それよりずっとイイ男。上野を後に池袋、走る電車は内回り、私は近頃、外回り」と美文調が子供にはとても新鮮だった。有名な「痴楽綴り方教室」は、実は三遊亭歌笑(1917-1950)の「純情詩集」「歌笑綴り方教室」の影響によるものらしい。「七つ八つで帯解けて、十九二十は器量よし、世の移り変わりと共に怪異な容貌とはなりぬ…」とある。「怪異な容貌」とは、歌笑は強度の斜視で、エラの張った四角い顔だったからである。痴楽が「柳亭痴楽はイイ男」「破壊し尽された顔の持ち主」と顔をネタにするのも歌笑の影響によるものである。
歌笑は、昭和25年5月30日、大宅壮一との対談を終え、銀座松坂屋前の電車通りを横断中、疾走してきたアメリカ軍のジープにはねられ死亡した。32歳の若さだった。翌日の新聞には小さい記事で掲載されていた。終戦直後の暗い世相を明るくした戦後最大の爆笑王の扱いとしてはひっそりしたものであったのは、加害者が占領軍の兵士であったためだろう。結局、ひき逃げ犯人はうやむやになったままであった。
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新聞に「ジープにぶつかって死んだ」とあり、米国人は「なんで、自分からぶつかりに行ったのか?」と英語の時間に笑い話を聞きました。
受動態で「ジープにぶつけられた」、が英語の特徴だと教わりました。びっくりするのが、「be surprisee at、驚かされる」にする授業の時でした。
投稿: さぶろた | 2008年11月 5日 (水) 16時29分