枕草子・冬はつとめて
冬はつとめて。雪の降りたるはいふべきにもあらず、霜のいとしろきも、またさらでもいと寒きに、火などいそぎおこして、炭もてわたるもいとつきづきし、昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火もしろき灰がちになりてわろし。
(口訳)冬は早朝があわれふかい。雪の降っているときの面白さはいうまでもない。霜などがたいへん白く、またそうでなくても、非常に寒い朝、火などをいそいでおこして、炭火を持ってゆくなど、冬の情感にぴったりである。もっとも、昼になって、寒さがやわらいでくると、火鉢の火も白く、灰がちになっている、などというのは、つまらないけど。
「枕草子」という名称が今日もっとも流布しているが、そのはじめは、はっきりした題名がなかった。中古文学の権威である田中重太郎(1917-1987)などはその著書のほとんどは「枕草子」ではなくて「枕冊子」と題している。
枕草子参考文献:北村季吟「枕草子春曙抄」、武藤元信「枕草子通釈」「清少納言枕草子別記」、金子元臣「枕草子評釈」、関根正直「枕草子集註」、小西甚一「通訳枕草子新釈」、井上慎二「清少納言伝記攷」(畝傍書房)「枕草子」(研究社)、池田亀鑑「枕草子に関する論考」(目黒書店)、田中重太郎「清少納言枕冊子の研究」(1947)、「新講枕冊子」(むさし書房)、「校本枕冊子」(古典文庫)、「枕冊子本文の研究」(初音書房)、「枕草子評解」、「清少納言枕冊子研究」(笠間書院)、「枕冊子全注釈」全5巻(角川書店)、「校注枕冊子」(笠間書院)、伴久美「枕草子要解」。
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