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2008年9月25日 (木)

養精修道と天命思想

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    「礼記」第31篇の「中庸」

  兵庫県芦屋市は昭和15年に武庫郡精道村から市になった。この「精道」という地名は現在も町名として残っている(市役所を中心とした付近)が、明治22年に誕生した「精道村」は、3年前に芦屋小学校(安楽寺内)と打出小学校(親王寺内)とが統合された校名「精道小学校」に由来している。つまり、もともと地名ではなくて、校名であり、創案されたネーミングだった。芦屋小学校と打出小学校との両校がどちらも譲らず、新しい名称を考えようということで、西宮在住の漢学者・豊田政苗に依頼した。豊田は、「養精修道」という漢語から「精道」という校名を考案したといわれる。

    ところで「養精修道」という語の出典は何であろうか。精神を鍛え、道を修める。意味自体はそれほど難解な語ではないが、四字成語として辞典に収録されていない。これと類似した語に「養精蓄鋭」がある。睡眠と休養をたっぷりとって鋭気を養うという意であるが、校名としては「養精修道→精道」のほうが相応しいであろう。養精・修道と分ければ「大漢和辞典」にも熟語としてある。大漢和辞典において「修道」は「中庸」の冒頭の節を引用している。儒教の君子の道「天命之謂性」(人間の本性は天が命じたものである)を説いている。つまり「養精修道」は天命思想を基本に導かれるものである。孟子の性善説を是とした朱熹は「礼記」の一編である「中庸」を重んじた。天地人の三界のなかで、孔孟の道とは天の道ではなく、地の道でもなく、人の道である。つまり「中庸」の冒頭の部分は、人間の正しい生き方を説いた内容である。こういった中国古典に由来する「精道」という校名、地名は伝統と品格のあるすばらいしい名称であると改めて感心させられる次第である。

第1節の通釈 天が命じ与えたもの、これを性という。その性にしたがい行なってゆくところに成り立つもの、これを道というのである。またこの道を修得すること、これを教えというのである。されば、道というものは、本来ほんの僅かの間も人間から離れられないものである。もしも離れられるなら、その道は真の道ではないのである。さればこそ道に明らかな君子は、道を修めて行くのに、その外に顕われているところはいうまでもなく、その定かには見えもしないところから戒めつつしみ、聞き知れぬところから恐れつつしむ。つまりかくしだてするひめごとほど人間にさらけ出されてうわさの種になるというたといの通りで、もつとも戒むべきことは、人知れぬことにある。だから君子はわれとわが身ひとりのまもりをつつしみ修めることを根本とするものである。

   「独慎」わが身を守り慎むことの大切さを説いている。しかしながら、あくまで天命思想から出発していることは注意すべきことである。天命などいうものは、空しい迷信に過ぎないではないかと誤解する方もあるかもしれない。古代中国において、政治や道徳や宗教や学問や教育などのあらゆる社会事象は、みな天命思想を根拠とし背景として成り立つものである。だがこの天を中心とした思想の動きは、孔子が現われてからは大きく変化した。孔子は道徳を中心としての経学を起こしたので、孔子以前の天命思想と、孔子の道徳を中心とした天命思想とは大きく区別する必要がある。

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コメント

 御案内の「芦屋市立精道小学校」の恩師と私(卒業生)等の有志にて、この数年、「精道」の由来と意味、出典について、そこばくの、勉強をつづけておりました。
 たまたま中国版グーグルにて検索中に、あなた様のブログに辿り着き、この養精修道の語に着目されていらっしゃる方がおられたという驚きと歓びで目眩を感じております。
 中国や台湾のWEBでは、主に張良に関する記述に見られる語であるところから、老子や道教にちなむ言葉であろうかと、おおむね推測していたところであります。
御説を学ばせていただければ望外の喜びです。
 さらに、漢学者・豊田先生が校名を命名された経緯を示す明治の当時の史料も全力で探しておりますが、行き詰まっています。
 ぜひお力とお智恵とを賜りたいと願っております。お時間ありましたら、ご連絡いただければ幸せであります。敬具

あくまで推測の域をでない記事ですが、おたよりをくださりありがとうございます。幕末期の学者で、孔子の儒学の影響を受けていない人はまずいないでしょう。そのような時代思潮を考慮すれば、豊田政苗の学統(学問の系譜・系統)は不明ですが、「養精修道」の語は儒教的な世界観と道徳観に基づくものと感じています。道家の思想は初等教育にはなじまないと考えます。

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