カバヤ文庫で知った知識の小宇宙
むかし10円のカバヤキャラメルを買うと中に「文庫券」が1枚入っていた。その文庫券を50点ためて、岡山のカバヤ本社に送るとカバヤ文庫が一冊もらえた。カバヤ文庫は戦後の少年少女たちの隠れたベストセラーだった。「シンデレラひめ」から「少女コロンバの復讐」まで昭和27年から昭和28年にかけて153タイトルが出版されている。当時「岩波少年文庫」が昭和25年から刊行されているし、昭和26年から講談社の「世界名作童話全集」、昭和28年には「世界少年少女文学全集」(全68巻、創元社)、「日本児童文庫」(全50巻、アルス)の刊行が始まっていたが、カバヤの原敏の企画によりカバヤ文庫は続々と刊行された。実際の執筆は京都の大学院生や高校教師によっておこなわれたが、岩波や講談社をリライトしたものだったらしい。だが各巻頭には錚々たる顔ぶれの序文がついている。伊吹武彦「シンデレラひめ」、重松俊明「ピノキオの冒険」、長広敏雄「母をたずねて」、出雲路敬和「乞食と王子」、大山定一「しらゆきひめ」、吉川幸次郎「アラビアンナイト」、桜井常之輔「可愛い小公女」、佐藤一男「宝島探検」、村上次男「にんぎょのおひめさま」、貝塚茂樹「孫悟空大暴れ」、中西信太郎「若草物語」、山本修ニ「ロビンフッドの冒険」などなど。カバヤ文庫は最初は郵送で贈られてきたが、あまりの人気のため、都会のお菓子屋ではガラスケースにカバヤ文庫が陳列されていて、いつでも文庫券で交換できるところもあったという。カバヤ文庫で本との出合いを知った人は多い。だいたい昭和13年から昭和18年ころまでの世代で、「生めよ増やせよ」の世代なので人口数は多い。本日、全国図書館大会、兵庫大会での池内紀さんの記念講演「図書館の小宇宙」でもあの「カバヤ文庫」の話があった。貧しかったが、貧しいとはおもわなかった、なぜか希望のある時代だった。いまから見ると粗末なつくりのカバヤ文庫だが、池内少年はそこから知識の小宇宙をみたのだろう。ほんとうにいい講演だった。
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