月夜のうさぎ
最近ではあまり使われないが、「烏兎怱々(うとそうそう)」という言葉があるが、「月に兎が住んでいる」という話は中国では随分と古くからある。太陽には三本足の鳥が、月には兎が住むとされ、烏兎(うと)は太陽と月のことで、「烏兎怱々」とは、歳月があわただしく過ぎ去ることをいう。
古書によれば、張衡の「霊憲」に「月は陰精の宗、積みて獣となり、兎蛤(うさぎとはまぐり)に象る」とある。傳元の「擬天問」に「月中何か有る。白兎薬を搗く」とあり、「古怨歌」に「煢煢たる白兎、東に走り西に顧る」とある。「五経正義」に「月中に兎有り、蟾蜍有るは何ぞ。月の陰なり」とある。蟾蜍はひきがえる。漢代の瓦当の文様に、この二者が同居している図がある。月が不死であるのは、霊徳があると信じ、その月中に兎がいるのも、兎に宜しい所があってのことと思われていたのであろう。「楚辞」天問第1段にも、次のような詩がある。
夜光何の徳ぞ
死すれば則ちまた育す
厥の利維れ何ぞ
而して顧莵腹に在り
(月には何の徳があるのか。死んではまた生まれる。何の宜い事があって、顧莵(うさぎ)は月の中にいるのだろう。)
今夜の北京オリンピック開会式。月から兎が眺めているだろうか。
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