山室軍平と祝橋
岡山の小学校高等科を卒えた14歳の山室軍平(1872-1940)が東京に着いたのは明治19年のことであった。勉強好きの少年がようやくにして得た仕事は、印刷工であった。明治20年の晩秋のことである。築地活版印刷所の前の築地川に祝橋がかかっている。その向こう側の橋の袂に、十数人の人が立っていた。「なんだろう」と近寄ってみると、キリスト教の路傍演説であった。よくはわからなかったが、演説が終ると、印刷物を配っていた。やじる者、石を投げる者、その周囲の罵詈雑言のなかにあって、毅然として神の言葉をのべ伝えようとする信者の姿が目に焼きついた。山室のキリスト教への信仰はこの祝橋での小さな出来事からはじまったのかも知れない。昭和6年、軍平59歳の時に思い出の祝橋に立つ写真が一枚残されている。のちに山室軍平はその生涯を日本救世軍の創設発展に尽力した。(参考文献:三吉明「山室軍平」人物叢書)
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