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2008年8月20日 (水)

ベアトリーチェとマノン

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 「情婦マノン」(1948)の逆さ吊りのシーン

   アベ・プレヴォー(1697-1763)が創り出した一人の女性像、マノンは、今までにかつてなかったタイプの女だった。ダンテにとってのベアトリーチェ、シェイクスピアのジュリエット、ゲーテのマルガレーテ(「ファウスト」)など世界の名だたる文豪が創り出した永遠の女性とはまったく別の世界の女だった。マノンはデ・グリューを愛しながらも金がなくなると、金持の男に走り、贅沢な生活に憧れる女性の典型となった。マノンのような男を破滅に導く悪徳の女が文学の祭壇に祭られるようになったのはこの小説が最初であろう。「マノン・レスコー」が世にだされた一世紀のちには、「椿姫」がデュマ・フィスによって書かれ、二つの作品は、オペラや映画で、いまも世界の子女の紅涙をしぼっているのである。

  無声映画ではリア・デ・プティやリア・マラの「マノン・レスコー」(1927)があるが、斬新なものとしては、アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督の「情婦マノン」(1948)があげられる。戦後のアプレの男女を現代風なアレンジをしてナマナマしく描いたもので、舞台もアメリカのニューオルレアンではなく、アラブの砂漠になっている。マノン(セシル・オーブリー)の死体を逆さに担いで砂漠を歩き、屍体に接吻するシーンは強烈な印象を残した。カトリーヌ・ドヌーブの「恋のマノン」(1967)や烏丸せつこの「マノン」(1981)など「マノン・レスコー」の映画化は翻案物が多いが、原作に忠実なマノンを見たいと願うのは私だけだろうか。セシル・オーブリー(1929-2010)はその後あっさりと女優を廃業し、モロッコの王族と結婚したり、児童文学者として成功したり、波乱万丈の人生を送った。

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