荒川の図書館職員不当配転事件(1973年)
家の近所まで巡回にくるブック・モビルの日はお年寄りの唯一の楽しみである
施設、資料、司書を図書館の三要素という。図書館はこれら3つの要素がととのえられ、結合されていなければならない。なかでも司書の役割は重要であり、経験豊かな司書の存在が、図書館サービスの質を決めるといっても過言ではない。ところが東京の特別区では1963年から司書の採用をしておらず、1996年には司書の職名が廃止された。とくに1973年4月に荒川区で発生した陰山三保子配置転換不服申立事件は、当時図書館問題研究会を中心に全国的な支援活動が展開され、記憶に新しい。ここでは「図書館問題研究会東京支部ニュース1973.4.20(№69)」の記事を引用して、事件の概要を紹介する。
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荒川で不当配転おこる!
4月の人事異動シーズンをむかえた折から又しても荒川で図書館職員に対して不当配転がおこりました。以下は18日の東京支部常任委員会で当事者と荒川の会員からうけた報告をもとにした事実経過で、急きょ皆さんに訴える次第です。
4月14日、会員であり、支部の事務局をうけもっている荒川区立荒川図書館の伊藤由美子さん、陰山三保子さんにとつぜん15日よりそれぞれ土木課、国保課へ異動の内示が出されました。荒川区ではこの二、三年人事内示はたった一日前にされているそうです。組合協定では一係3年、一課10年で異動するという原則になっており、伊藤さんは7年、陰山さんは6年前同一職場であり対象となったということで、同じく管理係の他の二人にも異動が出されました。
二人は私費で司書資格をとっており、図書館にずっと働く意志を固めていたところからただちにこの辞令を拒否し、組合(都職員労荒川支部)へ訴えました。支部は協定どおりなので仕方がない、個人としての訴えではとりあげられないので図書館分会として討議の上もってくるようにとのことでした。
ただちに南千住、尾久の職場にも訴え職場委員会を開いた結果、二人の意志を尊重して二人の辞令拒否を支持しようということになり組合へ再度もっていったところ組合では18日の執行委員会にかけると約束しました。
18日、総務部長に呼ばれ、郵送された辞令を拒否したため再度うけとるように云われ、「一般職として採用されたのだから司書として認めることはできない。司書職制度が問題となっているのは知っているが理事者は反対している。制度ができるまで待ったらどうか、しかしその時に戻すという意志はない」又、「他の職場へ異動しても主義主張はできますよ」などとも云ったそうです。そして「辞令をうけとらないなら別の方法―業務命令―を考える」と強迫的な発言をしました。
同じ日の執行委員会に二人は傍聴で出席しましたが、一般論として結論は出ているが当人の意見を聞くという前おきで執行委員会の結論は出さぬまま仕事の中味等について逆にいろいろ質問され、「支部では5年ときめて異動している、何故ゴネるのかわからない、他にも泣いている人はいる」などの意見が出されていましたが時間切れで又、次回にもちこすことになりましたが、何日ということは云われないままでした。
職場にはもう後任の二人の人もきており、机はまだそのままですが、出勤簿はもうなくなっています。職場の組合員はほとんど5年以下の新しい人であり、司書資格をもたない人は一人しかいないという状況なのでこうした問題に積極的になり得ない弱点はありますが二人はあくまで職場に依拠し、「司書職問題に身をもってとりくむために斗う決意をかためています。
今後の対策としては図書館分会を中心に活動を行い、支部を動かし、内外の組合員に広く支援を訴えていく方向で運動をすすめていくことになっています。
図問研常任委では図問研としてこの問題にどうとりくむかを討議し、専門職問題対策委員会のナマの問題としてガッチリ四ッにとりくんでいくことになり当面の対策をたてました。①図問研の窓口を専門対策委員長大沢正雄とする。②荒川の会員と毎日連絡をとり情況を知らせてもらう。③必要な時にすぐ対策委員会を召集する。④各委員はそれぞれ自分の職場に知らせ訴えていく。⑤住民運動、生野さんを守る会とも交流していく…で、荒川の会員を激励しながら組合の状況によっては必要な行動をしていく準備をすすめています。
会員の皆さん、伊藤さん、陰山さん、ならびに荒川の会員の方々にぜひ力強い支援をお寄せくださるようお願いいたします。
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