ヴェロニカ・ゲリン
次々と新作が公開され、好調なケート・ブランシェット。実在した女性記者ヴェロニカ・ゲリン(1959-1996)の麻薬犯罪との勇気ある戦いを描く。BSで映画「ヴェロニカ・ゲリン」(2003年度、ジョエル・シューマカー監督)を見た。
1994年、ダブリンの低所得者住宅地にはまだ子供の麻薬中毒者が溢れていた。女性記者ヴェロニカは犯罪者の利益のため多くの子供が犠牲になっていることを許せず、この事実を報道する決意を夫に打ち明ける。早速、裏社会に詳しいトレーナーや刑事から情報を集め、危険人物にも果敢な取材を行なう。そんなある日、彼女の自宅の窓に銃弾が撃ち込まれる。恐怖を感じるヴェロニカだが、脅しに屈せず取材を続ける。そんな彼女に2度目の渓谷が。今度は自宅に押し入った男が彼女の太股に銃弾を撃ったのだ。だがこれで世論を味方につけたヴェロニカは、麻薬犯罪組織の首謀者ギリガン(ジェラード・マクソーリー)に迫る。
この映画の背景には北アイルランドをめぐる民族問題がある。17世紀以降、アイルランド北部のアルスター地方にイギリスから多数のプロテスタントが移住した。19世紀になり、アルスター地方に繊維工業や造船業などがさかんになると、アイルランド南部から移住するカトリック教徒も増え、文化・習慣が異なる両者の間で、職や住居をめぐり、対立が激化するようになった。1922年、イギリス自治領としてアイルランド自由国が成立したとき、9州からなるアルスター地方のうち、プロテスタントの多い6州はそれに加わらず、「北アイルランド」としてイギリス(連合王国)に属した。アイルランド共和国も1937年の憲法で北アイルランドを自国領とした。しかし、カトリックの多い地方でも自己に有利な選挙区を設定して政治の実権を握っている北アイルランドのプロテスタントは、政治や経済の上で、少数派のカトリック教徒に対し優位を占めてきた。就職や住居などでしばしばプロテスタントから差別をうけているカトリックの住民の中には、実力でアイルランドの統一をめざすIRA(アイルランド共和国軍)などの組織も生まれている。プロテスタントとカトリック教徒の対立の根は深く、住民の意見も多様だが、1998年になってようやく平和的な解決に向かうって動きはじめた。
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