熱血柔道漫画全盛の頃
日本のアニメや漫画が世界で高く評価され、最近では美術館でも昔の漫画が展示されることが珍しくない。ケペルが幼い頃、まだ文字が読めない前から漫画を見ていた。市場内にある二軒隣りの本屋は新刊と貸し本の漫画を置いていた。一日10円であった。「少年」「少年画報」「冒険王」といった月刊誌の最新号も借りてほとんど読んだ。好きなのは、手塚治虫「鉄腕アトム」(少年)、横山光輝「鉄人28号」(少年)。これらロボット漫画、科学漫画はテレビ化される前から、当時の少年に圧倒的に人気があった。「赤銅鈴之助」(少年画報)よりスマートでカッコよかった。桑田次郎の「まぼろし探偵」や「月光仮面」などのヒーロー物も人気があった。しかし、空想科学漫画やヒーロー物よりも人気があったのは、スポ根ものである。スポ根という言葉は1970年代の「巨人の星」「あしたのジョー」で生まれた言葉で、当時はなかったが、「熱血柔道漫画」というジャンルが存在しており、ライバルとの対決、友情、貧困、根性、涙、などの要素はすでに揃い、スポ根漫画の元祖は、おそらく福田英一の「イガグリくん」(冒険王)といっても過言ではない。このほか田中正雄の「ダルマくん」(少年)、下山長平の「イガグリくん」(少年画報)が人気があった。当時、おそらく手塚治虫より福田英一のほうが人気があったと思う。NHK番組で手塚本人が出演して、福田を最大のライバルだと言っていたことを記憶する。日本の少年漫画が正当なる評価を受ける時代がきたように思うが、残念ながら手塚治虫以外の漫画家研究はあまりされていない。手元のコンサイス人名事典にも手塚治虫と白土三平、以外はほとんど掲載されていない。ウィキペディアの項目にも昭和30年代に活躍した漫画家にはあまりふれていない。単行本化されていない作品も多く、当時の記憶もうすれていくであろう。もっと早い段階で公的な漫画図書館を各県に設置しておればと悔やまれる。
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