葡萄色(えびいろ)の
古き手帳にのこりたる
かの会合(あいびき)の時と処かな
*
かの声を最一度聴かば
すっきりと
胸や霽(は)れんと今朝も思える
*
君に似し姿を街に見る時の
こころ躍りを
あわれと思え
*
時として
君を思えば
安かりし心にわかに騒ぐかなしさ
*
わかれ来て年を重ねて
年ごとに恋しくなれる
君にしあるかな
*
さりげなく言いし言葉は
さりげなく君も聴きつらん
それだけのこと
*
かの時に言いそびれたる
大切の言葉は今も
胸にのこれど
(石川啄木「一握の砂」)
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