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2008年3月10日 (月)

赤いドレスの女

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   1933年、インディアナ州の刑務所から釈放されたジョン・デリンジャー(1903-1934)はアメリカ中西部を舞台に銀行強盗を繰り返した。神出鬼没の犯行に銀行は恐怖に陥り、庶民は喝采した。1934年7月22日の夜、デリンジャーはガールフレンドのポリー・ハミルトンとアンナ・セイジを連れて、シカゴのバイオグラフ劇場で上映中のギャング映画「男の世界」(クラーク・ケーブル主演)を観に出かけた。

    アンナ・セイジはルーマニア出身で旧姓をアナ・カンパナスといい、長年インディアナ州で売春宿を経営しており、ルーマニアへの強制送還を恐れ、デリンジャーの情報をFBに売っていた。アンナはデリンジャーとバイオグラフ劇場で映画に行くことになっているとFBIに打ち明けた。FBIは映画館の外で待ち伏せする際、デリンジャーを見失わないため、アンナに赤いドレスを着るように指示しておいた。8時すぎ、アンナがカップルと一緒にやってきた。女性2人はロビーに入って彼を待った。ロビーの照明の下でアンナのオレンジ色のスカートは血の色に見えた。映画館は満員で、踏み込んで逮捕すればほかの観客を巻き添えにするのは必死だった。デリンジャーが出てきたところで逮捕することにした。午後10時30分、デリンジャーは2人の女性に挟まれて映画館から姿を現した。罠にかかったことに気づいたデリンジャーは、ポケットから銃を抜き、そばの路地に逃げ込もうとしたが、発砲する前に撃たれ、顔を下にして路地に倒れたという。遺体を一目見ようと物見高い野次馬が集まった。バイオグラフ劇場横の路地では、人々が固まりかけた血の海にハンカチやスカートの裾を浸していた。司法当局にとってはデリンジャー事件は解決したが、デリンジャーを英雄視していた庶民の間では、FBIが撃ち殺したのはニセ物だという噂が広まった。いまでもアメリカでは「赤いドレスの女 (the lady in red)」とは「自分を破滅へ導く運命の女」を意味する用語として使われている。(引用文献:「マーダー・ケースブック48、伝説の無法者」1996)

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