岡本信治郎「10人のインディアン」
10人のインディアン(10枚組の内) 岡本信治郎
昭和39年 長岡現代美術館蔵
ゴッホに関心をよせていた岡本信治郎は、やはりゴッホを象徴する色、いわばゴッホ色として黄色を用いた作品がよく見られる。「10人のインディアン」は髪飾りをつけ長靴をはいたインディアンの姿が、太い描線で囲まれた簡潔な形体と、明るく鮮やかな色調で描かれている。記号のように著しく単純化されたイメージは、豊かなユーモアと鋭いアイロニーに満ちて、抽象的戯画ともいうべき独自な世界を示す。戦後、抽象画が流行していたが、岡本はマンガ的絵画を描くことで、見るものにさまざまなメッセージを送り続けている。
岡本信治郎(おかもとしんじろう)は昭和8年、東京生まれ。昭和27年、都立日本橋高等学校を卒業後、印刷会社のアート・ディレクターとして26年間勤務。独学で水彩画をはじめ、日本水彩画展、二紀展などに出品。昭和31年、村松画廊で最初の個展を開き、同年ヨシダ・ヨシエらと「制作会議」を結成、新印象派の画家スーラの作品に出会うことで、現代の病理を明るい色彩と単純な形態によって表わす発想を得る。昭和31年から読売アンデパンダン展に出品、昭和37年と翌年のシェル美術賞展で佳作賞を、昭和39年第1回長岡現代美術館賞展で大賞を受賞。この間、「聖家族」「10人のインディアン」など、ユーモラスな形態の内に空虚感を込めた連作を発表し、現代日本のポップ・アートを代表する一人となる。
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