シモーヌ・シニョレとマリオン・コディヤール
シモーヌ・シニョレとチャールトン・ヘストン
女の情念を演じ続けたシモーヌ・シニョレ
第80回米アカデミー賞の授賞式が24日夜、ロサンゼルス・ハリウッドのコダックシアターで開かれた。作品賞は「ノーカントリー」(ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン監督)、主演男優賞はダニエル・デイ・ルイス(「ゼア・ウィルビー・ブラッド」)、主演女優賞はマリオン・コティヤール(「エディット・ピアフ愛の讃歌)。ダニエル・デイ・ルイスは第62回「マイ・レフトフット」で2度目で予想通りの受賞といえる。番狂わせは主演女優賞であろう。本命のケート・ブランシェット、ジュリー・クリスティーを抑えて、フランス映画で、フランス語で演技をしたフランス人女優が受賞したことになる。過去フランス女優がアカデミー主演女優賞を受賞したのは、第32回(1959)の「年上の女」のシモーヌ・シニョレ以来49年ぶりである。ただしこの「年上の女」はジャック・クレイトン監督、ローレンス・ハーヴェイ共演によるイギリス映画作品。つまりシモーヌ・シニョレはイギリス女性役で英語だったようだ。そもそもアカデミー賞の受賞作品の対象になるのは、「その年度の1月1日から12月31日までの間にロサンジェルス地区の劇場で1週間以上商業上映されたもの(外国語映画など一部例外あり)」という規定である。要するに「羅生門」「地獄門」のように外国語映画でも受賞の可能性はあるが、主演賞となるとかなりハードルは高い。マリオン・コディヤールの受賞はフランスのセザール賞主演女優賞とのダブル受賞となるが、フランス語で演技したフランス女優というのは、アカデミー史上初めての快挙なのである。
だが、シモーヌ・シニョレ(1921-1985)がハリウッドで認められたことも意外な事実であろう。女の哀しい宿命を演じたら、彼女の右に出る女優は世界中探してもいないであろう。たが余りにフランス的であり、ハリウッドに馴染まないタイプだろう。オスカー受賞後、「愚か者の船」(1965)、「悪魔のくちづけ」(1967)など数本の作品に出演したが、フランスに戻った。
シモーヌ・シニョレはドイツのビースバーデンで生まれた。幼くして、パリに移住し、タイピストや英語教師などを経て演技に興味を抱き、1942年から映画にエキストラ出演。本格的デビューは1945年の「理想的なカップル」。その後「デデという名の娼婦」(1946)「肉体の冠」(1951)「嘆きのテレーズ」(1953)「悪魔のような女」(1955)「年上の女」(1958)で個性的な容貌、抜きんでた演技力と存在感で戦後のフランス映画界を代表する女優だった。
後進のアヌーク・エーメ、ジャンヌ・モロー、フランソワーズ・アルヌール、ブリジット・バルドー、カトリーヌ・ドヌーブなどの美人女優がオスカーを手中にはできなかったが、マリオン・コディヤールの受賞を心から喜びたい。
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