大西瀧治郎と城英一郎
大西瀧治郎(1891-1945)は海軍の航空力強化の推進力として活躍した海軍軍人。源田実らと協力して真珠湾攻撃計画を作成したことでも知られる。またコンサイス日本人名事典にも「レイテ海戦にさいし、特別攻撃を発案、指揮した」と明記され、「特攻の生みの親」「特攻の父」としても知られている。しかし近年の情報によると、大西は「搭乗員が100%死亡する攻撃方法は未だ採用する時期ではない」としりぞけたとも言われ、積極的な推進者であったかどうか疑問がもたれている。大西イコール「特攻の父」というイメージはどうしてできあがったのか、あるいはフィクションの映画による影響が多少はあるのかも知れない。
東宝や東映ではオールスターキャストで戦争映画が多数作られている。実録物で実名の軍人が多数登場する。映画は未見であるが2本の映画は、大西瀧治郎の描き方が対照的だそうだ。東宝の「日本のいちばん長い日」(岡本喜八監督)と東映の「ああ決戦航空隊」(山下耕作監督)である。原作はそれぞれ大宅壮一と草柳大蔵。「日本のいちばん長い日」は8月15日を前後を克明に描いた名作として知られるが、大西瀧治郎(ニ本柳寛)、小園安名(田崎潤)ら悪役俳優を起用している。他方の「ああ決戦航空隊」は、大西瀧治郎(鶴田浩二)、小園安名(菅原文太)という大スターを当てているので、その人物の描きかたは東宝作品とは大きく異なる。近年、実質的、特攻の立案者として城英一郎(1899-1944)の名前が挙げられている。城は航空母艦千代田の艦長として、昭和19年10月にレイテ沖海戦で戦死している。東映の「ああ決戦航空隊」では城英一郎は松方弘樹が演じている。どのような描き方なのか未見なのでなんともいえないが、その他のキャスティングをみるだけで驚かされる。児玉誉士夫(小林旭)、関行男(北大路欣也)、玉井浅一(梅宮辰夫)などなど。ロッキード事件発覚は昭和51年なのでこの映画が公開された2年後であった。とにかく、児玉機関と大西瀧治郎の関係も当然のこと描いてあるわけでとても気になる映画である。「日本のいちばん長い日」が歴史の真実に近くて、「ああ決戦航空隊」が戦争を美化している、という通り型どおりの見方では歴史的事実を見誤ることになりかねない。
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